理系の大学3年生になると、「大学院に進学するか」「就職するか」を選ぶタイミングがあります。
大学院に進学した学生に、進学した理由を聞くと、
・就活で有利だから
・理系の7割は大学院に行くから
・研究するなら大学院出ておかないと
など、「曖昧な」理由が多いです。僕もその一人でした。
大学院進学は強制されているわけではないので、自分の意志で決めているはずなのですが、「もう辞めたい」「就職しておけばよかった」と感じるタイミングが必ずといっていいほどあります。
これは、「大学院に行く本当の意味」を理解しないまま、進路を決めてしまっていることが原因です。
僕は、手取り17万のベンチャーに就職したので、
・給料が高くなる
・就活に有利になる
・専門性が身に付く
などの、一般的に言われている大学院に行くメリットを一切享受できていません。
そんな僕ですが、ベンチャーで1年半働く中で、「大学院で学んで良かった」と感じる場面がいくつもありました。
そこで今回は、どんな進路を選ぶ人にも共通して言える、大学院に行く意味について、僕の考えをお伝えします。
記事の最後には、後悔しない進路の選び方も紹介しているので、最後までご覧いただけると嬉しいです。
大学院に行く本当の意味は「考える力」を身に付けること
一般的に言われている、大学院に行くメリットはこのあたりでしょう。
▼スキルが身に付く
・専門性
・論理的思考力
▼就職が有利になる
・給料が高くなる
・大企業に入りやすい
・研究・開発職に就きやすい
・進路を考える時間を得られる
実際の経験からしても、これらはその通りだと思います。
実際に僕は、「就職に有利だから」という理由で大学院に進学しました。
だとすると、大企業に入ったり、研究職に就けなかったりした人は、大学院に言った意味はなかったのでしょうか?僕はそうは思いません。
僕は、手取り17万のベンチャーに就職したので、
・専門分野の知識
・就活での優位性
これらをほとんど活かせていません。ですが、今の仕事をする中で、大学院での経験が活きたことがあります。
それは「考える力」が身に付いたことです。
え?そんなことなの?と思った人も多いと思います。それもそのはずで、学校では考える力の重要性を教えてくれません。
学校の教育は、生徒に問題を与えて、決められた経路で、用意した答えに辿り着いてもらうことが重視されています。そして、周りと同じことが正しいとされます。
小学生の頃、道徳の授業で「自分の意見を言ってください」と言われても、誰も手が挙がらない光景を覚えていませんか?
僕もそうでしたが、自分の中で感じたことや考えたことがあったとしても、「周りと違ったらどうしよう…」という気持ちが勝ってしまい、発言ができないのです。
このような教育方法では、考える力は育つわけがありません。
考える力とは、『自分で問題に気づき、正解のない問題に解を与えること』なのです。
それでは次に、「考える力」がなぜ重要なのかをご説明します。
考える力が大切である2つの理由
考える力が大切である理由は、次の2つです。
- 情報が簡単に手に入る時代になったから
- 成長速度が変わるから
1. 情報が簡単に手に入る時代になったから
インターネットが普及する前は、情報を手に入れるための手段として、「テレビ・新聞・書籍」などが主流でした。
「テレビや新聞」は、比較的新しい情報が手に入る反面、情報が限定的なので、必要な時に必要な情報を手に入れることが難しい情報源でした。
逆に「書籍」の場合は、たとえば図書館に行けば膨大な量の本が並んでいるため、必要とする情報を、自分から探すことができます。しかし、書籍が発行されるまでには、1年以上の期間が必要なので、新しい情報は手に入れづらい情報源です。
このような、情報が手に入りにくい時代には、情報の価値が高いため、いかに最新の有益な情報を手に入れるかが重要でした。
時代は進み、一人一台スマホを持つのが当たり前になりました。何かを知りたいと思ったときには、手元にあるスマホでググれば、だいたいの情報は簡単に手に入れることができます。
誰もが同じ情報を簡単に手に入れることができるため、周りと同じことをやっていては、その人自身の価値も上がりません。
こうした時代においては、周りと違うアイデアを生み出せる人が評価されます。つまり、「考える」ことの価値が相対的に高くなったといえるでしょう。
2. 成長速度が変わるから
誰もが経験したことがあると思いますが、同じことをやるにしても、「やらされること」と「自分がやりたいと思ってやること」では、得られるものが全く違います。
やらされることからは、何も身に付かないと言ってもいいかもしれません。
たとえば、野球少年がプロ野球の試合を見る場合でも違いは出ます。
コーチに無理やり見せられる場合は、ただただボーッと見ているだけで、「早く時間が過ぎないかな」と思っているでしょう。反対に、自らの意思で見ている場合は、得られるものが大きいです。
ピッチャーであれば、「速い球を投げるための下半身の使い方」のヒントが得られるかもしれません。バッターであれば、「速い球に対応するための構え」のヒントが得られるかもしれません。
社会に出ると、誰でもできるような仕事を任されることもあります。それを「雑用」だと思ってこなす人と、「少しでも何かを学ぼう」と思ってこなす人では、当然、成長のスピードは変わりますよね。
就職して仕事の中で「考える力」を身に付ければいいのでは?
「考える力」の重要性は何となく分かっていただけたと思いますが、次のような疑問が出てくるかもしれません。
・「考える力」は、わざわざ大学院に行って身に付けないといけないの?
・大卒で就職すれば、給料をもらいながら仕事の中で「考える力」を身に付けることができますよね?
たしかに、仕事の中でも「考える力」を身に付けることはできます。
しかし、社会人を1年半経験した僕の経験からいうと、相当がんばらないと、会社で「考える力」を身に付けるのは難しいです。
なぜなら、仕事の目的は「考える力」を身に付けることではないからです。当然ながら会社では、個人の成長よりも利益が優先されます。
また、大きな会社になればなるほど、仕組化されているので、個人の考えを取り入れてもらえる余地が少なくなります。ましてや新卒の意見なんて、なかなか取り入れてもらえませんし、最初は仕事を覚えるだけで精一杯になってしまいます。
そうすると、考える回数が減るので思考力が育ちません。そして、最も大切な「考えるクセ」が身に付かないまま過ごすことになります。
2年目、3年目になって、仕事に余裕が出てきてから、考える力を身に付けよう!と思っても、考えるクセがついていないので、よほど固い意思がないと続かないでしょう。
大学院で「考える力」が身に付く理由
大学院で「考える力」が身に付く理由は、自分で考えないと次に進めない状況に無理やり置かれるからです。
大学院では研究を行うのですが、研究の流れをざっくり説明すると、以下のようになります。
- ゴールを決める
- ゴールにたどり着くまでの問題を自分で考える
- 問題の原因を考える
- 解決策の仮説をたてて、実証してみる
分かりやすく具体例を挙げると、次のイメージです。
- 数学の実力テストで90点を取る
- 三角関数の応用問題でいつも点を落としている
- 公式の丸暗記になっている
- 公式の導出から学んでみる
これをひたすら繰り返します。
どの工程においても、「自分で考える」ことが必須です。
「作業」と違って、自分で考えることが出来ない場合は進捗がゼロになるので、1週間前から何も進んでいないということが起こります。
そうなると、教授から「この1週間何やっていたの?」と怒られ、だんだんと研究が嫌いになっていきます。
仮に、教授にアドバイスをもらえて、言われたとおりにやったとしても、自分で考えて取り組んだことではないので、出てきた結果を評価することができません。
そうすると、次にやるべきことも分からないので、そこで停滞してしまい、同じことの繰り返しになります。
つまり、「自分で考えないと次に進めない状況」というわけです。
これを乗り越えて卒業することができれば、自然と考える力が身に付いています。
進路に悩む理系学生に伝えたいこと
理系の大学だと、研究職に就くことが正義とされていますが、「研究が好きで好きでたまらない」という人以外には、研究職はオススメしません。
なぜなら、研究職は会社に依存しがちだからです。
今の時代は変化が早く、今まで安全とされてきた大企業でも、10年後、20年後にはどうなっているか分かりません。
研究を行うためには、高額な設備が必要なので、万が一、会社がなくなってしまったり、辞めないといけなくなってしまったときに、自分一人の力で研究を続けていくことはできません。
研究職に就いた友人に聞きましたが、研究職は専門性が高すぎて、転職するのもかなり難しいようです。
このような時代にオススメしたいのが、「個人でもマネできるビジネスモデル」を学べる企業に就職することです。
たとえば、トヨタのように自動車を個人で作れと言われてもムリですが、ホームページ制作であれば、一人でも作れそうですよね。
大企業の研究職は初任給が高いので、憧れる人も多いです。しかし、10年後、20年後まで考えると、大企業の研究職に就くことが最適な選択肢ではないかもしれません。
もちろん、研究が大好きで、世の中に役立つ開発をしたい!という人であれば、大企業の研究職に就くことが一つの正解かもしれません。
どちらが正しいというわけではないです。大切なのは、目先の利益にとらわれず、先を見据えて進路を選ぶこと。それができれば、自分にとって最善の進路が見つかるはずです。
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